猫同士寄り添って眠ったり、追いかけっこをしたりと、多頭飼育をしていないと見られない光景があります。「1匹ではさびしそうだから2匹目を飼いたい」「兄弟猫数匹を引き取った」など、猫の多頭飼育をする理由はさまざま。
猫はもともと、なわばり意識の強い生き物です。どんな理由にしても猫同士が仲良くやれるか、何を準備すればいいかと心配になりますよね。そこで、猫の多頭飼育に必要な準備や手順、成功させるポイントをわかりやすく説明します。
猫の多頭飼育をするとどんなことが起きる?
猫の多頭飼育とは文字どおり、2匹以上の複数の猫を飼うこと。では、猫の多頭飼育をするとどんなことが起きるのでしょうか。
仲が良くなれば猫同士が遊ぶように
猫の多頭飼育をしていると、猫同士で追いかけっこをしたり、遊んだりとほほえましい姿を見せてくれます。室内飼いの猫なら、運動不足が解消できます。また、猫同士が寄り添って眠るなど、見ているだけで心温まる風景を味わえるかもしれません。
相性が悪くても停戦状態になる
残念ながら、猫同士の相性が悪いこともあります。しかし、いつまでもケンカをしているわけではなく、そのうち停戦状態になることがほとんどです。自分のなわばりや居場所がしっかりあれば、大きな問題に発展することはほとんどなく、猫たちもそれなりにうまくやっていくのです。
たまにはケンカも
おいしいおやつ、または飼い主の膝の上など快適な場所をめぐって、ときにはケンカが起こることもあるでしょう。猫同士の相性が悪い場合は、ふだんはお互いに避け合っていても、鉢合わせでケンカになることがあります。
飼い主はちょっと大変?
猫が増えるぶん、フード代や猫砂などの購入費、ワクチン接種や動物病院での診療費などの出費も増えます。また、トイレ掃除や抜け毛の掃除などの負担も増えそうです。また、どの猫にも平等に接する、先住猫を優先するなどの気遣いもしなくてはならないでしょう。
猫の多頭飼育、どんなことを準備すればいい?
飼い主の手間が増えたとしても、多頭飼育がうまくいくと、たくさんの魅力やメリットがあります。猫の多頭飼育を成功させるためには、どのようなことを準備すればいいのでしょうか。
フード用の皿、水入れは頭数分用意
猫それぞれのフード用の皿、水入れを用意しましょう。別々に用意をしても、同じお皿から一緒に食べてしまうことはあります。猫それぞれがみんなしっかり食べているか、ときどき確認しましょう。特に、持病がある猫が療法食を摂っている場合などは、ほかの猫に食べられてしまわないように気を付ける必要があります。
それぞれがくつろげる場所をつくる
猫たちそれぞれがくつろげる場所を頭数分用意してやりましょう。キャットタワーなど、高さが異なる居場所がつくれるものがおすすめです。猫用ベッドも頭数分用意します。
猫それぞれの通り道も確保
ほかの猫の寝床を通らないと自分がくつろげる場所に行けない、トイレに行きたいのに仲の悪い猫の居場所がある、というストレスをなくすためにも、猫の通り道をチェックしておきましょう。
トイレは頭数プラスもうひとつ
トイレが足りないと猫には大きなストレスになり、膀胱炎などの病気の原因にもなります。頭数プラスもう1個のトイレを必ず用意してください。トイレにふたが付いているタイプであれば、猫たちも落ちついて排泄できます。
また、猫は泌尿器疾患にかかりやすい動物です。どの猫がどのトイレで排泄するか、確認しておきましょう。血尿が出た場合など、どの猫がした尿か特定する必要があるからです。
災害時にも安心、キャリーケースも頭数分
キャリーケースは頭数分用意しておきましょう。動物病院に連れていくときはもちろん、避難が必要な災害が起きたときに、すぐに対応できるように用意しておくと安心です。
猫の多頭飼育を成功させるポイントとは?
猫の多頭飼育を成功させる大きなポイントは「飼い主が焦らないこと」。この点を踏まえてどういうことに気をつけたらいいか、見ていきましょう。
知っておきたい猫の相性とは?
猫にも相性があります。猫の年齢や性別、育ってきた環境なども影響します。これらを配慮して飼育をすすめると良いでしょう。猫の組み合わせでは、次のような傾向がみられます。
- 子猫と子猫
子猫同士は相性がいいようです。良い遊び相手になり、社会性を身に付けられるメリットもあります。
- 成猫と子猫
母猫と子猫は、すんなり多頭飼育ができます。子猫はいつまでも赤ちゃんのように振る舞うかもしれません。成猫が先住猫で、あとから子猫を連れてきた場合は、先住猫が子猫の世話をすることがあります。出産経験のあるメス猫によく見られますが、オス猫でも世話をすることがあります。しかし、先住猫が元気な子猫を持て余してイライラしてしまうことも。
- 成猫と成猫
成猫同士は特に慎重にすすめていく必要があります。成猫のオス同士はなわばり意識も強く、ケンカになる可能性があります。
猫同士を慣れさせるコツ
では、どうやって慣れさせていけばいいでしょうか。特に先住猫がいるところに新しく猫を飼う、成猫を2頭以上飼う場合は、以下の手順にしたがって猫の様子を観察しながら、焦らずにすすめていきましょう。
- 別々の部屋でそれぞれ過ごす
お互いが見えないようにして、別々の部屋で過ごします。ケージを使うと便利です。お互いに、どうもほかに猫がいるみたいだ、と気付かせます。
- 猫の匂いがするものを置く
それぞれの猫の匂いがする敷物やタオルなどを置き、ほかの猫の匂いに慣れさせます。
- ケージ越しに対面
ケージ越しに少しずつ、何度か対面させます。威嚇(いかく)せず興味を示すようなら、遊ばせてみます。このときは必ず飼い主が見ていてください。
- 部屋の広さや数に対応した頭数を
部屋数より猫の数が多いと、猫同士のストレスも多くなります。部屋数や広さに適した頭数を飼うようにしましょう。多頭飼育を始めたあとに、猫が粗相をしたり食欲が落ちたりしたら、ストレスがたまっているかもしれません。そのときは環境を見直してみましょう。
猫たちの健康管理が大事!
猫が1匹でも感染症にかかると、ほかの猫への感染リスクが高まります。多頭飼育では猫たちの健康管理が大切です。トイレを清潔に保ち、排泄物のチェックもしましょう。
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トイレのこまめな掃除とチェックを
トイレはこまめに掃除をします。複数でひとつのトイレを使ってしまうこともあり、汚れるペースも早まってしまいます。また、血尿や下痢をしている猫はいないかなど毎日掃除しながらチェックしておくといいでしょう。
避妊・去勢は必ずすませて
オスとメスを飼う場合は、望まない妊娠を避けるためにも必ず避妊や去勢をします。
感染症や寄生虫チェックも忘れずに
猫が感染症にかかっていないか、また寄生虫がいないかを動物病院で検査してもらいましょう。ほかの猫への感染を防ぐためにも必ずチェックします。万が一感染していた場合は、治療しておきます。
ワクチンも必ず打ちましょう
健康に問題のない猫でも外に出て、ウィルスや細菌などに感染してしまうことがあります。ワクチンを打っておけば、感染症の危険性はかなり回避できます。
猫たちも飼い主も幸せになれる頭飼育を
猫の多頭飼育をすると、猫同士が遊び追いかけっこをする姿が見られるようになります。一緒に寄り添って眠る姿を見ているだけでも心が癒されるでしょう。もし、それほど仲良くならなくても猫同士、お互いに距離を保ちながら生活していけるのです。
多頭飼育をするときは、フード用の皿や水入れ、トイレを複数用意したり、各猫の居場所をつくったりする必要があります。猫を平等に扱うなど、気遣いも必要になります。また猫同士を会わせるときも、飼い主が焦らず慎重にすすめていくことがポイントです。
避妊や去勢を済ませておくことも大切です。日々の健康チェックやワクチン接種などをして猫たちの健康管理をしっかり行いましょう。そうすることで、猫たちも飼い主も幸せに暮らしていくことができるでしょう。
文:伊藤 悦子
プロフィール:麻布大学獣医学部環境畜産学科(現:動物応用科学科)卒。子供の時からいつもそばに動物がいる暮らしをしています。インコ、文鳥をはじめ犬や猫、モルモットなどと生活をしてきました。大学で学んだことだけではなく、子犬や子猫の世話から老犬老猫の介護、多頭飼いと今までのさまざまな経験から、皆様のお役に立ちたいと思っております。現在は茶トラのめす猫2匹と同居しています。
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