自宅で猫をシャンプーする、実は奥が深くてデリケートな課題です。というのも、猫は体が濡れることに対して繊細なうえに、自分で毛づくろいをするから。基本的に、シャンプーは汚れたときだけにします。あまり頻繁にシャンプーをすると、皮膚を守るために必要な皮脂まで洗い流してしまい、皮膚トラブルの原因にもなるのです。特に、迎えたばかりの子猫は人間に対する恐怖を持ってしまう可能性もあるため、できるだけシャンプーは控えます。そうはいっても、長毛種、巻き毛種、ヘアレス種は定期的なシャンプーが必要です。獣医師とも相談して最適な回数を決めましょう。
このように、注意すべき点の多い猫のシャンプー。今回は、猫に嫌がられないシャンプータイムの準備や手順、注意する点をご紹介します。
まずはシャンプー前の準備から
猫をバスルームに連れて行く前にしておくことが、いくつかあります。猫にも人間にも快適でスムーズなシャンプータイムのために、しっかりと準備しておきましょう。
風呂場や水音に慣れてもらう
初めてのシャンプーの場合、何日か前からバスタブに湯をためているときに、風呂場でおもちゃを使って遊ばせたり、おやつを食べさせたりして過ごします。楽しい体験と水音や風呂場が結びつくことで、猫が驚いたり怖がったりすることなくリラックスできるようになるでしょう。
シャンプー前のグルーミング
猫が水やシャンプーを嫌がり暴れてしまったときの被害を小さくするために、前日までに爪切りをすませておきます。シャンプーの直前に爪切りをすることは避けましょう。爪切りもシャンプーも猫にとってはうれしいことではないので、別々の日に行うことで猫の負担を小さくするのです。
シャンプー前には、抜け毛や毛がらみを取り除くためのブラッシングもすませておきます。被毛のタイプに合ったコームやブラシを使って、優しくブラシをかけます。胸からお腹にかけては特に優しく慎重に。シャンプー前でなくても、短毛種の場合は週に1回、長毛種の場合は毎日のブラッシングが必要です。
シャンプー前の準備運動
シャンプーの直前にはおもちゃを追いかける遊びなどでたっぷり体力を使ってもらいましょう。エネルギーを発散させておくことで、シャンプー中におとなしくなることが期待できます。
猫のシャンプーのために用意するもの
快適なシャンプータイムのために必要なグッズです。シャンプーの前に手元に用意しておきましょう。
- 猫用シャンプー
健康な猫の皮膚は中性~弱酸性で、人間とも犬とも違います。人間用や犬用のシャンプーは使わないようにしましょう。猫用シャンプーのなかでも、匂いの少ない低香料または無香料のものが理想的です。
- プラスチック容器
シャンプーを薄めるために使います。プラスチック製のドレッシングボトルやシャンプーの空き容器など、注ぎ口の付いているものが使いやすいです。
- 桶や猫用のバスタブ
大きさは、猫が使っているトイレと同じくらいを目安にします。
- 浴槽マットまたは厚手のタオル
猫用の桶やバスタブの底に敷いておきます。猫が桶の中に立ったときに、爪をしっかりと食い込ませて安定させるためで、猫に安心感を与えます。
- 乾燥用のタオル
やわらかい生地のタオルをたっぷり用意しておきます。
- ドライヤー
低温設定が可能で、音の小さいタイプが理想です。
猫のシャンプーの手順
準備が整ったら、いよいよシャンプーです。シャンプーする場所は寒くないように温めておきましょう。
猫の体を濡らすのは慎重に
桶の底にマットか畳んだタオルを敷き、38℃くらいの湯を10cmほどためます。湯が熱すぎないよう注意しましょう。
最初は、猫の足先だけを湯に浸します。猫が落ちついてきたら、桶に立たせます。シャワーの湯がチョロチョロ出るように設定できるなら、シャワーで猫の体全体に湯をかけます。シャワーが勢いよく出る音は猫を驚かせるので、チョロチョロ設定ができない場合はプラスチックのカップなどを使って湯をかけます。このとき、顔(特に耳や目)に湯がかからないように気をつけましょう。
薄めたシャンプーでマッサージ
プラスチック容器にシャンプーと湯を1対5の割合で入れて、温かいシャンプー液をつくります。猫の体にシャンプー液をかけ、首からしっぽの方向へ毛の流れに沿って優しくマッサージします。このときも顔を濡らさないよう注意しましょう。
すすぎは念入りに
桶にたまったシャンプー液の湯を捨てたら、最初に体を濡らしたときと同じように、チョロチョロシャワーかプラスチックカップで湯をかけて体についたシャンプーを流します。このときも、湯が熱過ぎないことと顔を濡らさないことに注意が必要です。桶の湯を捨て体をすすぐことを3回繰り返し、シャンプーが残っていないことを確認します。猫の顔は湯で絞ったタオルできれいにします。顔にはシャンプーは使いません。注意深くふいてあげましょう。
乾燥も優しく
すすぎが終わったら、大きなやわらかいタオルで猫をくるんで暖かい場所に移動し、念入りに優しく水分をふき取ります。ドライヤーは低温に設定して30cm以上離し、毛並みに沿って動かしながら風を当て乾かします。長毛種の場合は手ぐしを使って、毛がらみができないようにしましょう。
大切な最後の仕上げ
猫の体がしっかり乾いたら、笑顔で思いっきりほめてやりましょう。もちろん大好きなおやつもたっぷりあげてください。新しい体験をポジティブな印象でしめくくることは、次回のためにも、人間と猫との関係のためにもとても大切です。
猫のシャンプーは手間と時間をかけて
以上のように、猫のシャンプーにおいて大切なキーワードは「手間と時間をかけること」です。
家猫の種の多くは水に濡れることを嫌がりますが、蛇口から流れる水に魅了される猫もたくさんいます。飼っている猫がシャンプー好きになるかどうかは、飼い主の腕にかかっています。猫にとって体を洗われるというのは重大な出来事ですが、猫が嫌がるポイントや、洗う側が気をつける点を知っておくことで、猫のシャンプーは思っているよりもスムーズで簡単になるのです。
もうひとつ大切なのは、飼い主自身がその手間と時間を楽しむことです。「面倒だなあ」とか「不安でドキドキする」という気持ちでいると猫はしっかりとそれを感じとり、シャンプーされることにネガティブな印象を持ってしまいます。愛する猫のために手間ひまかけたシャンプータイム、猫といっしょに楽しみながらさっぱりしてくださいね。
文:ガニング亜紀
プロフィール:動物の味方のフリーライター。シェルターから来た保護犬2匹と暮らしています。愛犬の健康管理や、地元のアニマルシェルター、動物に関する法律などを知るようになったことがきっかけでアメリカの犬事情の発信記事を書くようになりました。犬や猫を取り巻く環境について幅広く書いています。アメリカ在住。
参考: