飼い主を悩ませる子犬のしつけに、〈トイレトレーニング〉・〈噛み癖〉・〈無駄吠え〉の3つがあります。上手くしつけられず「まだ子犬だから仕方ない」と思っているまに成犬になり、思わぬトラブルに発展してしまうことも。この3つの難関を乗り越えるにはコツがあります。ポイントを押さえて子犬のうちにクリアしましょう。
トイレトレーニングは飼い主のやる気次第
トイレトレーニングが終了している子犬を家族に迎えることもあるでしょう。しかし子犬は環境が変わると失敗が増えたり、できていたことができなくなったりします。もう一度やり直すくらいの気持ちで迎えてあげてください。
なお、トイレは人通りが少なく、ドアや窓から離れた静かで目立たない場所に設置します。サークルで囲み、ペットシーツを敷き詰めましょう。
トレーニングが完了するまでトイレの場所を移動させない方がいいので、犬を迎える前に家具の配置も考えてくださいね。
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最初が肝心!マンツーマンで徹底的にしつけよう
トイレトレーニングは”失敗させないこと”が成功への近道です。排泄のタイミングを見逃さないよう、24時間つきっきりになるくらいの気持ちで取り組んでください。
トレーニング期間は、だいたい1週間~1カ月で完了することが多いのですが、子犬の性格によっては半年近くかかることもあります。根気よく付き合うようにしてください。
ハードルを低く設定し、成功体験を積み重ねよう
トイレトレーニングはいきなりトイレで排泄させるのではなく、トレーニング内容を細かく分けて、ひとつずつ課題をクリアするように誘導していきます。
- ペットシーツを敷き詰めたサークルの中に飼い主が連れ込んで排泄させる。
- オモチャやおやつで子犬を誘い、自分の足でサークルに入らせ、排泄させる。
- 誘導なしで自分からサークルに入り、排泄できるようにする。
- サークルの中に敷くペットシーツの面積を小さくしても成功できるように練習する。
- トイレトレイの上で排泄できるように練習する。
上記のように、トレーニングのハードルを低く設定してください。できていたことができなくなったら、ひとつ前の課題に戻って成功を体験させます。
成功したら、ご褒美をあげたり、言葉で褒めながら撫でたりしてあげてください。決められた場所で排泄できたら嬉しいことがある、としっかり覚えてもらいましょう。
叱るのはNG!
子犬は人の言葉の意味を理解できません。叱られても「相手をしてくれた(=嬉しいこと)」と受け取ってしまうことがよくあります。
また、失敗したときに叱られて恐怖を感じた場合、排泄すること自体を我慢するようになってしまう危険があります。飼い主の意図が伝わらないことが多いので、叱らないようにしてください。
失敗したら子犬を完全に無視して即、片付けます。臭いが残っていると、そこでまた排泄してしまうので消臭剤を使ってください。叱らず無視するのが効果的です。
つきっきりが無理ならサークルの中で飼う
共働きなどといった理由で家を留守にする機会が多い場合は、ペットシーツを敷き詰めた広いサークルの中で飼いましょう。オモチャ、寝床、給水器などをセットしたサークルの中にペットシーツを敷き詰め、ペットシーツの上で排泄させます。
最初は帰宅すると即、シャワー!という事態が続くと思います。でも、それは仕方のないことと割り切ってください。そして家に居る時間はできる限りつきっきりでトレーニングを行い、少しずつステップアップしていってください。
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噛み癖は困るけれど、噛むのは犬の本能
犬は噛む動物です。噛むのを抑制するということは、本能的な欲求を抑え込むことになり、ストレスの原因にもなります。しかし、好き勝手になんでも噛ませることはできません。
噛んでいいものを与える
噛むことを禁止するだけでは本能を満たせなくてストレスがたまります。必ず噛んでいいものを与えましょう。
子犬のころに噛んでいたものは成犬になってからも噛みます。家具は養生して噛まないようガードし、靴のような噛まれたくないものも犬から遠ざけ、噛んでいいオモチャを与えてください。
噛む理由を正確に把握しよう
犬が噛むのは次のような理由が考えられます。
- 防衛本能や闘争本能
- 口の中のトラブル
- ストレス
犬は縄張りを持つ動物ですから、自分の縄張りを守るために戦う本能を持っています。来客や配達員、家の前の通行人に吠えるのも多くは〈縄張り意識〉が原因です。
必ず犬専用の安心できる場所を与え、いろいろな人と交流を持って「近づく人は敵ではない」と教えると同時に、飼い主がリーダーになって「自分は守られているから大丈夫」と愛犬が思える飼い方をしてあげましょう。
口内炎、腫瘍など〈口の中のトラブル〉がある場合は早急に治療を行いましょう。そして、〈ストレス〉がたまらないように散歩で気分転換をしたり、飼い主と触れ合う時間をたくさん作ったりして噛む状況を減らし、噛み癖をなくしていきましょう。
叱る時間は短めに
犬の噛み癖を叱る場合は、母犬が子犬を叱る方法を真似します。母犬は子犬を叱るとき、子犬の口や首の後ろを噛んで動けないようにします。
噛むのがダメと教えるときは、子犬が噛んだその場で首の後ろを押さえて「ダメ」と言いましょう。子犬は動けなくなると「いけないことだ」と理解します。
また首を押さえたときに「ダメ」と聞かせることで「ダメ」という言葉が禁止の言葉だと覚えます。噛んだその場で、ダメと確実に短時間で教えましょう。
無駄吠えというのは人の都合!犬は吠えて主張する
無駄吠えと言いますが、無駄と感じているのは人です。人にとって不都合な場合を無駄吠えと言っているのです。犬は吠えて意志を伝えるので、何を伝えようとしているのか考えてみてください。
犬が吠える理由を知ろう
犬が吠える主な理由は次の3つです。
- 縄張り侵入者に対する威嚇
- 怖くて吠える
- 要求のために吠えている
たいていは3つのうちのどれかです。愛犬が吠える理由を探って、解決策を考えましょう。
子犬のころの社会化が重要
できるだけ吠えない犬に育てるためには、犬を人の社会に慣らす必要があります。そのためには、ワクチン接種が終わって散歩に出られるようになったら積極的に外へ連れだすのがお勧めです。
人、音、車や電車といった人の社会に慣れると、敵と感じるものや、警戒するもの、怖いものが減ります。
同時に、犬が吠えても要求を飲まないようにして、吠えなくてもいい環境を作り、吠えて要求しない犬に育てていきましょう。
吠えたときに嫌なことが起これば吠えなくなる
犬は学習能力が高い動物です。吠えたときに嫌なことが起こると吠えなくなります。お勧めなのは、吠えたら遊びを終わらせたり、無視したりして「吠えると面白いことがなくなる」と経験させることです。
また、吠えたときに飼い主がやったとバレない方法で驚かせるのも有効です。吠えたら嬉しくないことが起こる、と繰り返し経験させて吠えないように誘導していきましょう。
原因を探って対策を練ろう
トイレトレーニング、噛み癖、無駄吠えは飼い主を悩ませる3大トラブルです。それぞれ、コツを押さえて根気よくしつけてください。
噛むのも吠えるのも、犬の本能であり、意志を伝えようとする行為です。本能を満たすことと、本能を発揮しなくてもいい状況を作ることを大切にしながら、困った癖にならないよう子犬のうちにしつけていきましょう。
文:須永 智尋(すなが ちひろ)
プロフィール:
15年の社会人経験後、育児と仕事の両立を考えてフリーライターに転身。小動物看護士・小動物介護士・ドッグシッター・人工授精師(牛)という資格を活かし、ペットの飼養管理・しつけ・介護などについての指導や執筆を行っている。ダルメシアン、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーといった大型犬を飼うことが夢。
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