
愛猫が、健康で元気いっぱいに過ごすのに大切なのが食事。飼い主は、猫の食事の基本をしっかり押さえておきましょう。猫に必要な栄養やキャットフードの選び方、手づくりフードのポイント、そして猫が食べてはいけないものまでわかりやすくお伝えします。
猫に必要な栄養は人とは違うの?
猫は肉食性で、人間とは必要とする栄養の種類や量が異なります。もちろん雑食性の犬とも異なります。猫が必要とする栄養の特徴を見ていきましょう。
肉食動物である猫に必要な栄養、4つのポイント
猫はもともと肉食動物。ねずみなどを捕獲して食べることで、体に必要なアミノ酸の一種タウリンや、アラキドン酸などの必須脂肪酸、ビタミンやミネラル、水分を摂取していました。室内で飼育されている猫は、人間が提供する食事でたんぱく質や脂肪、ビタミンやミネラルなどの栄養をとる必要があります。
- 健康維持に必要なたんぱく質は多めに
猫の健康維持のためには、多くの動物性たんぱく質が必要です。その量は人間の約5倍、犬の約2倍にもなります。特に、必須アミノ酸タウリンは、猫に欠かせない成分で動物性たんぱく質からとる必要があります。タウリンは猫の網膜や心臓の健康維持に必要です。体内でつくることができないので、キャットフードには必ずタウリンが配合されています。キャットフードのパッケージにはタウリンではなく「動物性たんぱく質」と表示されていることもあります。
- 皮膚や毛のためには脂肪も大切
脂肪は、猫にとっての大切なエネルギー源。皮膚や細胞、被毛の健康も維持します。体内でつくり出せない必須脂肪酸は食事からとる必要があります。
- 炭水化物はほどほどで
肉食性である猫は、ご飯やイモ類などの炭水化物をエネルギー源にしません。たくさん与える必要はありませんが、炭水化物に含まれる繊維質は、腸の環境を整える役割があります。
- 体調維持にはビタミン、ミネラルも必要
ビタミンやミネラルも猫の体調維持や免疫力の強化、成長などに欠かせません。バランスよくとることが大切で、不足したり過剰になったりしないよう注意します。キャットフードは、ビタミンやミネラルもバランスよく配合されています。
猫の食事、1日に与える回数は?量はどのくらい?
猫には1日何回、どのくらいの量の食事を与えたらいいのでしょうか? 目安を知っておきましょう。
成猫は1日2~3回、子猫は1日5~6回
大人の猫では1日2~3回程度でいいでしょう。何度かに分けて少しずつ食べる猫もいます。そのようなタイプの猫にはドライフードをお皿に入れておき、好きなときに食べられるようにしておきます。フードは長時間放置すると酸化してしまうので、ある程度時間がたったら処分します。特にウエットフードは腐敗してしまうので、食べ残しは早めに処分します。子猫は成長期なので、様子を見ながら1日5~6回に分けて食べさせてやりましょう。
キャットフードのパッケージの表示を参考に
与える分量は、キャットフードのパッケージに書いてある量を目安にします。成猫では、1日に体重1㎏あたり約80kcal程度のエネルギーを必要としています。運動量などや活発さなども考慮して、加減しましょう。どのような場合でも、新鮮な水を飲むことができるようにしておきます。
キャットフードを選ぶポイントって?
スーパーやホームセンターでも手軽に買えるキャットフード、たくさんあってどれを選べばいいのかわからなくなってしまいますよね。キャットフードを選ぶポイントを押さえて、飼っている猫にぴったりのフードを選びましょう。
「総合栄養食」とおかずとなる「副食」
ペットフードには、「総合栄養食」と「副食」があります。キャットフードのパッケージに書いてあるので、確認して購入しましょう。
- 総合栄養食とは
猫が必要としている栄養素すべてをバランスよく配合したフードです。これと新鮮な水を与えれば、猫の健康が維持できます。
- 副食とは
猫にとっての「おかず」です。ごほうびとして、また食の細い猫が喜んで食べるように、総合栄養食に混ぜるなどして与えます。副食だけ与えていると、栄養不足になるので気をつけてくださいね。ほかにも猫用おやつなどが売られています。
ドライフードとウエットフード
キャットフードは、ドライフードとウエットフードに分けられます。
- ドライフードとは
含まれる水分含量が、10%以下のフードです。カリカリと呼ばれることもある固さのあるフードで、歯垢が付きにくいというメリットがあります。また、栄養価も高く比較的長期保存ができます。
- ウエットフードとは
水分含量は75%程度あり、やわらかく食べやすいフードです。嗜好性が高く猫が好みます。缶詰やレトルトパウチの状態で販売されています。水分が多くとれるので、あまり水を飲まない猫に与えるといいでしょう。
年齢にあったフードを選ぶ
子猫と成猫、高齢猫、妊娠中や授乳中の猫はそれぞれ要求する栄養やカロリーが異なります。猫の年齢やライフステージに合ったフードを選びます。キャットフードなら、子猫用、成長期用、高齢猫用などがパッケージに書いてあります。適したものを与えてくださいね。
シチュエーションに合ったフードを選ぶ
ほかにも、室内飼育の猫、肥満気味の猫向けのフード、毛玉が胃にたまらないように配慮されたフードなどがあります。愛猫の状況にあったフードを選んでやりましょう。また、心臓や腎臓に持病がある猫向けの「特別療法食」もありますが、これらは獣医師の指示に従って与えることが重要です。
猫に手づくりフードを食べさせたい!
大切な猫のために、自分でつくった食事を与えたいという飼い主もいるでしょう。手づくりフードのメリットは、なんといっても使った素材が何かわかっていること。飼い主が自分で選んだ素材なので安心ですね。
しかし、猫の必要とする栄養バランスをしっかり考えてつくる、という専門的な知識も必要となります。事前に専門家にレシピを聞くなどして、猫の栄養学を学んでからおいしいフードを手づくりしてやりましょう。
ときどき猫の健康チェックをして、不足している栄養分がないか調べる必要があります。また適正な体重が保たれているか、定期的に体重を測りましょう。
注意!猫に食べさせてはいけないものはこれ!
猫が食べると中毒症状を起こしたり、場合によっては命に関わったりする危険な食べ物があります。与えないことはもちろん、間違って口にしないように保管することも大切です。
- 玉ネギや長ネギなどネギ類
ネギ類、ニラなどは溶血性貧血を引き起こしてしまいます。
- チョコレート
カカオの成分「テオブロミン」によって、けいれんや興奮を起こしてしまいます。
- 生魚・イカ・タコ
消化が悪いため、下痢や嘔吐(おうと)を引き起こしたり、のどに詰まってしまったりすることがあります。また、チアミンという成分がビタミンB1欠乏症を引き起こしてしまいます。魚は火を通して与えます。
- 生卵
生卵に含まれるアビジンという酵素によって、皮膚炎や成長不良となる恐れがあります。加熱すれば大丈夫です。
- レバー
ビタミンAの過剰摂取で骨の成長障害や、食欲不振になることがあります。
- ほうれん草
シュウ酸カルシウムが含まれており、尿結石の原因になります。与えるときは必ずゆでて、アクを抜いてからにします。
- 鶏の骨
鶏の骨は縦にさけて先端がとがるので、口の中やのど、消化器官を傷つけてしまいます。
- お酒
たとえ少量でも中毒になってしまいます。
- コーヒーや紅茶、緑茶
カフェインの影響で、嘔吐や下痢、てんかんなどを起こすことがあります。
以上のようなものを間違えて飲食してしまったときは、大至急、動物病院に連絡して診察を受けましょう。
大切な猫、健康で長生きしてほしいから
猫が健康で長生きするためには、食事に気をつけることが大切です。猫は肉食動物、ということを踏まえて必要とする栄養を理解し、健康に気を配ってやりましょう。ペットフードを選ぶ際は、猫のライフステージやシチュエーションに合わせて選びます。何か症状や病気がある場合は、獣医師に相談して特別療法食を与えることもあります。猫に手づくりフードを与える場合は、栄養バランスを考え専門家に相談しながらつくってやりましょう。猫に食べさせると危険な食品があることも覚えておき、間違って食べさせたりしないようにすることが大切です。
文:伊藤 悦子
プロフィール:麻布大学獣医学部環境畜産学科(現:動物応用科学科)卒。子供の時からいつもそばに動物がいる暮らしをしています。インコ、文鳥をはじめ犬や猫、モルモットなどと生活をしてきました。大学で学んだことだけではなく、子犬や子猫の世話から老犬老猫の介護、多頭飼いと今までのさまざまな経験から、皆様のお役に立ちたいと思っております。現在は茶トラのめす猫2匹と同居しています。
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