大切な愛犬や愛猫がこの世を去ってしまう。とてもつらいことですがいつかは必ずやってくるそのとき、どんなふうに悲しみや喪失感と向き合い、何をすればいいのでしょうか。一人一人違う繊細な問題ですが、知っておくことで心が楽になったり、次の一歩に進んだりするきっかけになることもあります。いつか来るお別れのときのために、心に留めておきたい大切なことを5つ紹介いたします。
ペットが旅立つ前は笑顔を忘れないで
愛犬が年老いて介護が必要になった、愛猫に重い病気が見つかって最期が近いことがわかった。そんなときに大切な家族である犬や猫のために、できる限りの手を尽くしてあげたいと思うのは当然で、尊重されるべきことです。
でもどんなにがんばっても、犬や猫の寿命は人間よりもずっと短いものです。その限られた時間の中で、治療や闘病にだけ意識が向いてしまって悲愴な顔をする飼い主さんをペットたちは望まないのではないでしょうか。
ペットにとって一番うれしいことは優しく撫でられて「いい子だね、かわいいね、大好きだよ」と声をかけてもらうことです。もしもまだペットの体力が許すなら、大好きだった場所に連れて行って思い出を作るのもいいですね。
ペットが旅立つ前には、その子のために笑顔を忘れないでいてください。
ペットが旅立ったら、思いきり悲しんでいい
愛する大切なペットの死に向き合うとき、涙を流して悲しみを表現するのは自然なことです。悲しみをネガティブなものとして抑えこむのではなく、受け入れることが心の回復に役立ちます。
心の痛みを受け入れる
ペットの死から日の浅いうちは感情が激しく上下したり、突然涙が止まらなくなったりするようなこともあるでしょう。そんなときには我慢しないで大きな声で泣いてもいいし、落ち込んで無気力になることがあってもいいのです。
「ペットが死んだくらいのことで、こんなに取り乱したり泣いたりするのはおかしいと思われるんじゃないか?」と考える必要もありません。愛する者を失った心の痛みを自分自身から隠さないで、目をそらさずに受け入れることが悲しみを癒していくステップになります。
後悔の気持ちも健全なこと
ペットを見送った後に「あの時こうしていれば」とか「もっと早くに気づいていれば」という後悔の気持ちが止まらないこともあるでしょう。それは大切な家族であるペットへの愛が深かったからこそです。自分の行動を悔やむことも、悲しみのプロセスに必要な健全なことなのです。
現実を受け入れるための時間がかかってもいい
やんちゃだった愛犬がもういないこと、甘えん坊だった愛猫がもう膝に乗ってこないこと、そんな現実を受け入れて、静かになった家の中に慣れていくことに時間がかかってもいいのです。
自分の気持ちは自分のペースで
「あの子が亡くなってからもう○ヶ月なのに、まだ悲しい自分はダメなんじゃないか?」そんなことはありません。ペットと飼い主さんの関係はそれぞれみんな違っているように、悲しみからの立ち直り方もそれぞれに違うのです。
何ヶ月、時には何年もかかるかもしれない。それは人それぞれで、あなた自身が決めることです。何年経っても愛犬や愛猫のことを思いだすと涙が出る、それでかまわないのです。
時間がかかる人がいれば、早く吹っきれる人がいるのも当たり前
時間をかけて悲しみを癒す人がいるのと同様に、人よりも短い時間で吹っきれて次のペットを迎える人もいます。これも亡くなったペットへの愛が少なかったということにはならないし、ほかの人が口を出すことではありません。
「亡くなったあの子にしてやれなかったことを次の子に」とか「あの子が教えてくれたことを次の子に生かしたい」というのも悲しみからの立ち直り方のひとつです。
つらいときは人の手を借りてもいい
自分ひとりで抱え込まずに、時にはほかの人が差し伸べてくれる助けの手を借りてもいいのです。
悲しみを伝える相手を作る
あなたと同じように大切なペットの死を乗り越えた経験のある人と言葉を交わしたり、いっしょに過ごしたりすることで救われることもあります。身近にそんな人がいなくてもSNSのペットコミュニティや犬猫ブログのコメント欄などに参加したり、ただ読んでみたりするだけでも「自分だけじゃない」と心が軽くなることがあります。
ペットの最期の時間をいっしょに見守ってくれた獣医さんに、気持ちをしたためたお礼状を書くことも心の整理になります。多くの獣医さんは、亡くなったペットのことを飼い主さんが想像する以上に深く思ってくださっているものです。
ペットロスは人生の中の大きな経験のひとつです。決して小さなことではないので、場合によってはプロのカウンセラーに相談するのも良い方法です。
自分が聞く立場になったら気をつけたいこと
ペットの死を悲しむあなたを心配して声をかけてくれる人もいるでしょう。そんなとき多くの人がつい言ってしまう言葉が「そんなにいつまでも悲しんでいると、天国のペットも安心できないよ」というものです。でもほかの人から、ペットの死を悲しむ気持ちに罪悪感を持たされる必要はないのです。将来、ほかのペットロスに苦しむ人に自分が声をかけるときにも気をつけたいことですね。
思い出の中でもペットとの絆は続いている
飼い主さんとペットの絆は、それぞれに特別で唯一無二のものです。愛犬も愛猫もあなたの思い出の中では永遠に生きています。
ペットの写真やビデオを見て楽しかった時を思いだすこと、ペットがあなたのところに来てくれた意味を考えること、あなたの気持ちをペットへの手紙として書いてみることなど、彼らが旅立った後にも絆を続け、深めていく方法もあります。死はあなたとペットの関係の終わりとは限りません。
お別れは悲しいけれど、出会えた幸せは永遠
大好きな愛犬や愛猫の死というつらい現実が目の前に迫ってきたとき、ペットがそばにいる間はその子のことを一番に考えて笑顔で話しかけてあげてください。そしていよいよペットが旅立った後にはあなたの気持ちにしたがってよいのです。悲しみとの向き合い方も時間のかけ方も人それぞれで、これだけが正しいという解答などありません。自分だけで乗り越えられないと思ったら、誰かに助けを求めてもいいのです。そしていつか悲しみから立ち直ったら、同じようにペットを見送った人の気持ちに寄り添ってあげられたら素敵ですね。
文:ガニング亜紀
プロフィール:犬の味方のフリーライター。シェルターから来た保護犬2匹と暮らしています。愛犬の健康管理や、地元のアニマルシェルター、動物に関する法律などを知るようになったことがきっかけでアメリカの犬事情の発信記事を書くようになりました。犬や猫を取り巻く環境について幅広く書いています。アメリカ在住。
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