動物病院で処方された薬を、犬が飲んでくれないことはよくあります。犬は嗅覚が鋭く、知能も高いため、そのまま与えるだけでは決して飲んではくれません。
動物病院で処方される薬には様々な形状があり、薬によって飲ませ方が異なります。今回は犬へ薬を飲ませる基本的な方法について、薬の形状別にご紹介します。
犬はなぜ薬を嫌がるの?
動物病院で処方される薬は、基本的に苦くてまずいものが多いです。犬にとって薬の苦みは、毒があったり腐っていたりするサインとなります。
犬は野生の本能で、「これ(薬)は食べてはいけないものだ!」と思っているのです。他にも、犬が普段薬を見慣れていないために警戒している場合もあります。
犬が薬を嫌がるのは、野生で生き抜くための知恵だといってよいでしょう。
犬に間接的に薬を飲ませる方法
間接的手法で犬に薬を飲ませるには、以下のような方法があります。
(1)食事と一緒に混ぜる
もっとも簡単で、かつ犬にストレスのかからない薬の飲ませ方です。まずは、いつも食べているフードに薬を混ぜて様子をみてみましょう。錠剤だと残してしまう場合は、粉々に砕いて振りかけてもかまいません。(ただし、薬によっては効果が落ちる場合があるため、獣医師に要相談)
最初に振りかける薬の量は、あくまで少量にするのがポイント!
あまり多すぎると、犬がフードに不信感を抱くようになってしまいます。薬を無駄にしないためにも、まずは少量で試してみて下さい。犬がそのまま食べてくれるようなら、次回からは全量入れても良いでしょう。
(2)とろみをつけたスープに混ぜる
粉薬やシロップは、野菜の煮込み汁や鶏がらスープに混ぜることもできます。片栗粉などでとろみを付けると、ほとんどの犬は喜んでなめてくれますよ。あまり熱いと舌を火傷してしまうため、ある程度冷ましてから与えましょう。(なお、塩分制限のある心臓・腎臓疾患の犬に与える際は、獣医師に要相談)
(3)おやつと一緒の袋に入れておく
おやつの香りを薬につけることによって、犬が薬の臭いを気にせず食べてくれることもあります。おやつは薬への香りづけのみに使うため、いつも療法食を食べている犬でも問題ありません。薬の劣化を防ぐためにも、使うおやつは水分量の少ないものにして下さいね。
(4)おやつにねじこむ
薬をおやつの中に入れ、外からは見えないようにして与える方法です。大好きなおやつと一緒に与えると、意外とすんなり食べてくれる犬は多いものです。その中でも、ブロック状のジャーキーやチーズは犬の嗜好性が高く、使いやすいおやつです。
(5)ピルポケットを使う
ピルポケットとは、投薬専用に作られているトリーツのことです。犬の嗜好性・与えやすさはバッチリで、中心には薬を入れるための穴が開いています。手でつまむと簡単に形が変えられるため、様々な形状の薬にも使えて便利。ほんのり甘い香りで、薬のにおいにも気づかれにくくなりますよ。
犬に薬を直接飲ませる方法
どうしても薬を飲まない犬には、飼い主が直接飲ませるしかありません。
犬に直接薬を飲ませるには、ちょっとしたコツとスピーディさが必要です。はじめはうまくいかないこともありますが、焦りは禁物!
できるだけ犬に緊張が伝わらないよう、リラックスして望みましょう。
(1)錠剤・カプセル
①犬をおすわりの姿勢にさせ、薬を利き手の指先で持つ
②反対の手で犬の頭をつつみこむように、上あごをつかむ(両犬歯の後ろ側辺りを持って)
③犬の頭を優しく上へ向け、利き手の中指を口に入れて下に引く
④口が開いたら、薬をできるだけ喉のほうに置く(舌の中心よりも奥へ入れること)
⑤口を閉じた状態で犬の鼻に息をふきかけるか、喉もとを優しくさする
⑥ごくっと喉が上下したら、スポイトで水を飲ませる
最後に水を飲ませることで、薬がしっかりと犬の胃の中に落ちてくれます。口に入れた際に溶け出した薬の苦みがあっても、水である程度は流れてくれますよ!
(2)粉・シロップ
犬に粉薬やシロップを飲ませるには、大きく分けて2つの方法があります。
【方法⒈】
①粉薬を少量のぬるま湯で溶き、とろみのあるものに混ぜておく(例:缶詰、ヨーグルトなど)
②利き手の指に薬入りペーストを付けて、錠剤を投薬する要領で犬の口を開ける
③ペーストを犬の上あごや歯茎に塗り付けたら、手を離して飲み込ませる
【方法⒉】
①粉薬を少量のぬるま湯で溶き、スポイトに入れておく(シロップは溶かないでOK)
②利き手でスポイトを持ち、反対の手で犬の頭をつつみこむようにつかむ
③頬のたるんでいる部分を軽くめくり、犬歯のうしろにスポイトを差し込む
④スポイトをやや下向きにし、薬が喉に直接当たらないようにする
⑤喉が上下するのを確認しつつ、少量ずつ薬を流し込んでいく
錠剤が苦手な犬には、薬を粉々に砕いて直接スポイトで飲ませた方が早いこともあります。ただし、口回り(マズル)を触られるのは、犬にとって嬉しいことではありません。
②で暴れる犬には無理して触らず、部屋の角を使って後ろに下がれないようにしましょう。
犬が薬を飲むのを拒否する時
犬が薬を飲むのを嫌がり、直接飲ませることができない時があります。
【投薬時によく見られる犬の行動】
・逃げようとする
・前足を出してくる
・顔をそむける
・うしろに下がる
・咬む
(1)逃げたり、前足を出す犬はバスタオルでくるむ
バスタオルなどで犬の体をしっかりと巻くと、犬は手足を自由に動かせなくなります。ただし、犬が飼い主の手に前足を乗せる行動は、「やめてほしい」という気持ちの現れです。できるだけ犬への負担が少なく済むよう、できるだけスピーディに投薬するようにしましょう。
(2)顔をそむける・後ろに下がる
犬を部屋の角でおすわりさせ、これ以上後ろに下がれないようにします。犬が立ち上がろうとしたらすかさず「ダメ」といいながら、膝で進路を断ちましょう。諦めの良い犬であれば、観念して投薬をさせてくれるようになります。
(3)咬む
犬に相当なストレスがかかっているため、無理せず動物病院に相談しましょう。病気の症状によっては、獣医師が薬の形状を違うものに変えてくれることもあります。短い期間であれば投薬のたびに動物病院に通うというのも、ひとつの方法です。
犬に薬を飲ませる際の注意点
犬に薬を飲ませる時に、もっとも注意しなければならないのは誤嚥(ごえん)です。
誤嚥とは、食べものや異物が間違って肺や気管に入ってしまうことをいいます。犬が誤嚥を起こすと、咳やくしゃみ、嘔吐や呼吸困難などの症状がみられるようになります。犬に薬や水などを飲ませる際は、十分注意して行なって下さいね。
また、老犬や心臓に疾患のある犬に投薬をする際は、できるだけ興奮させないこと。過度なストレスを感じたり暴れたりすることによって、犬の心臓には大きな負担がかかります。初めて薬を飲ませるときは、あらかじめぬいぐるみなどで練習してからにしましょう。
正しい投薬方法をマスターしよう
今回は、犬が薬を嫌がる理由と薬の飲ませ方、投薬時の注意点について紹介しました。
難しいと思いがちな犬への投薬ですが、やりかたは意外とシンプルですよね。投薬が上手にできれば、犬の体にかかる負担やストレスはとても少なくなります。
愛犬がいつまでも元気でいられるよう、投薬は正しく、かつ確実に行ないましょう!